2026年5月8日金曜日

xTalks Vol.36 テーマ:外に出ることで、人生は動き出す ― 異文化体験がひらく「自己」と「選択肢」 ―

「外に出た方がいいよ」

そう言われて、素直に動ける人は、どれくらいいるでしょうか。

忙しいし、面倒だし、そもそもそこまで強い理由もない。
なんとなく気にはなるけれど、決定打に欠ける。
結局、同じ場所に居続ける。

それが、多くの人のリアルではないでしょうか。

一方で、「外に出れば人生が変わる」という話も、私たちは何度も聞いてきました。
海外に行けば成長できる、視野が広がる、、、たしかに、それっぽい気もします。

でも、本当にそうでしょうか。

もしそれが本当なら、外に出た人はみんな変わっているはずです。
しかし、現実はそこまでうまくはいっていません。

xTalks Vol.36は、こうした“当たり前すぎる前提”をあえて疑うところから始まりました。

そしてこれは単なるテーマ設定ではありません。
玉川大学が掲げるESTEAM教育におけるELF(English as a Lingua Franca)や、異分野融合の思想を実装していくためには、避けて通れない問いでもあります。

外に出るとは、単に場所を移動することではなく、自らの前提や専門の枠を越えていくことです。
その経験なしに、真の意味での共創や越境は成立しません。
だからこそ本テーマは、本学の教育思想そのものに直結する重要な論点なのです。

ここで、今回のテーマをあらためて見ておきます。

「外に出ることで、人生は動き出す― 異文化体験がひらく『自己』と『選択肢』 ―」

このタイトルで意図しているのは、「人は変わるのか」という問いに対して、あえて「変わる」とは言い切っていない点にあります。
重要なのは劇的な変化ではなく、何かが「動き出す」という感覚です。

外に出ることで、すぐにスキルが身につくわけではありません。
しかし、自分の中にある前提や正しさが揺らぎ、それまで見えていなかった選択肢に気づく。
その瞬間に、人生は静かに動き始めるのではないでしょうか。

話題提供①:
山本一貴さん「つまらないなら外にでろ!-ノリと勢いが広げる人生-」

「海外に行っても、人生は劇的には変わらない」

今回の議論でまず印象的だったのは、この一言でした。
バックパッカーとして世界を巡り、インドでの生活も経験した山本さんが語ったのは、華やかな成功談ではなく、むしろその逆です。
英語が急に話せるようになるわけでもなく、スキルが爆発的に伸びるわけでもない。むしろ不便やトラブルの連続であり、非効率な体験だとおっしゃいました。

それでもなお価値はある。
なぜなら、そこで初めて「正しさや幸せは一つではない」と実感できるから。
世界は正しい人と間違っている人に分かれているのではなく、ただ違う人がいるだけである。
この認識の転換が、自分の中にあった見えない前提を崩していきます。


話題提供②:

原洋平先生「外に出て、初めて見えるもの―解き放たれる自己と意識される日本―」

「正しさは、場所によって変わる」

原先生の話は、さらに一歩踏み込み、「正しさ」という概念そのものを問い直すものでした。海外に出ると、自分は個人ではなく「日本人」として見られるという驚きすら覚えた気づきを共有いただきました。
何気ない言動が、そのまま国民性として解釈される。
約束を守るかどうか、時間に対する感覚、他者への配慮。
それらがすべて「日本人とは何か」という問いに接続されていきます。

さらに印象的だったのは、英語に対する認識のズレです。
日本では正しい文法や発音が重視されますが、海外では多少崩れていても「伝わること」が優先される。
この違いが、私たちの中にある「話せなさ」を生み出しているのかもしれません。
ここでも問われているのはスキルではなく、自分が何を正しいと信じているのか、その前提そのものなにかもしません。


Lightning Talk

「越境は、海外だけではない」
今回のxTalksの成果をより立体的にしていたのが、Lightning Talkで提示された多様な視点でした。

新井さんは、海外ではなく秋田でのゼミ合宿経験を語りました。
インドア派で実家志向の彼女が、3泊4日の滞在を通じて得た気づきは、「遠くへ行って近くを知る」というものでした。
非日常的な環境に身を置くことで、自分の中の当たり前が相対化される。
越境とは必ずしも海外ではなく、異なる時空間での非日常と深く関わることによっても起こるのです。

石川さんの玉川学園・玉川大学のTAP(Tamagawa Adventure Program)に関する話からは、越境が地理的な移動を伴わなくても起こり得ることが見えてきます。
チームでの課題解決や振り返りを通じて、自分の考え方や他者との関係性が揺さぶられる。これもまた一つの越境のかたちです。

近藤先生の話では、マレーシアでの経験を通じて、日本の社会がどのように築かれてきたのかという問いに向き合い、「歴史を学ぶ意味」を実感したことが語られました。
同時に、多様性を受け入れることの難しさも示されました。
頭では理解していても、実際に異なる文化に触れたとき、人は簡単にはそれを受け入れられない。
そのリアルな感覚は、多様性を考える上で重要な示唆を含んでいます。

こうした多様な視点を並べてみると、一つの共通点が浮かび上がります。人は必ずしも変わるわけではない。
しかし、確実に揺さぶられる。
そしてその結果として、選択肢が増える。

変化ではなく、拡張。

それが「外に出る」という行為の本質なのかもしれません。

では、どうすれば外に出ることができるのでしょうか。
今回の議論で示された答えは、意外なほどシンプルでした。
美味しいものを食べに行く。
興味のある文化を見に行く。
まずは国内からでもいい。
重要なのは、大きな決意ではなく、「ちょっと面白そう」という感覚です。

そしてもう一つ重要なのは、トラブルや違和感をどう受け止めるかです。
それを失敗と捉えるのか、それとも面白い経験と捉えるのか。
その違いが、同じ出来事の意味を大きく変えていきます。

海外に出た経験が無い方は「少し恐い」という感覚を覚えた一方で、海外へ出た経験が多い人たちに「突き抜けた何か」を感じることができたようでした。

外に出る意味は何か。
それはスキルを得ることでも、成長を保証することでもありません。
自分の前提を疑えるようになること、そのための装置のように思えてきます。

そして、その「外」は必ずしも海外である必要はありません。

あなたにとっての「外」とは、どこでしょうか?


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xTalks Vol.36

外に出ることで、人生は動き出す

― 異文化体験がひらく「自己」と「選択肢」 ―


「外に出る」ことは、単なる移動や旅行ではなく、自分の当たり前を揺さぶり、人生の選択肢を広げる体験へ。

 バックパッカー経験や留学などの体験が、私たちの新たな気づきと選択肢を広げ、人生が生きやすく楽しくそして広がりを持たせるのか。

本イベントでは、バックパッカーとして世界を巡った経験と、幼少期からの海外生活・留学経験という異なる越境のかたちをもつ二人をお招きします。

偶発的で身体的な越境と、環境としての越境。 一見異なる二つの経験の掛け合わせから、外を出ることで何が見えるのか それはどのような学びとして蓄積されるのか そして、その学びは将来の選択肢にどう影響するのか

あらためて今、「外に出る」ことの意味を徹底議論します。

●こんな方にオススメ

海外経験や留学に興味はあるが、一歩踏み出す意味を言語化できていない方

今の生活や価値観を少し広げてみたい方

異文化体験を通して見える新たな自分に関心がある方

将来の選択肢を広げたいと考えている方

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日時:5月8日(金) 18:00~20:30 場所:Zoom開催

話題提供:

①山本 一貴 さん(玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科OB) 「つまらないなら外にでろ!-ノリと勢いが広げる人生-」

②原 洋平 先生(玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科) 「外に出て、初めて見えるもの― 解き放たれる自己と意識される日本 ―」

xTalks Vol.36 テーマ:外に出ることで、人生は動き出す ― 異文化体験がひらく「自己」と「選択肢」 ―

「外に出た方がいいよ」 そう言われて、素直に動ける人は、どれくらいいるでしょうか。 忙しいし、面倒だし、そもそもそこまで強い理由もない。 なんとなく気にはなるけれど、決定打に欠ける。 結局、同じ場所に居続ける。 それが、多くの人のリアルではないでしょうか。 一方で、 「外に出れば...