運営の教育学部・濵田です。第30回となった今回は、大学とK-12の垣根を越えた「出張xTalks」という初の試み。玉川学園のPrimary Division(小学部:小学校5年生まで)の日常風景を視察し、つぶさに<全人教育>の教育実践を目の当たりにした上で、そのまま現地で次世代教育のアイデアを語り合うという、刺激的な企画でした。
小原國芳が<全人教育>を唱えたのは大正10(1921)年。従来の教育には人間教養が足りないという問題意識を強く持った小原は、教育を正道に戻し、真実の人間性を伸ばす必要があるとして、塾教育・道徳教育・芸術教育・宗教教育・労作(※創作)教育などの実践を重視する「ゆめの学校」を構想しました。それが玉川学園です。
まず、Primary Division教育部長の野瀬佳浩先生に、玉川学園の教育理念についてご講話いただきました。小原國芳の教えは、どんなに頭がよくても、どんなに知識があっても、優しい心がなければ駄目だということ。優しい心とは「感じる心」であり、その心は本物に触れる(※一流に触れる+フィールドに出て五感で感じる)ことで培われる。玉川学園では、音楽教育や劇教育が、その中核を担ってきました。
同時に、現代社会を生き抜くためには、読み書き計算(特に読解力)という基盤的な力を着実に身につけた上で、「学びの技」という探究の技法を身につけることが求められる。これは、創始者・小原國芳の教えに対して、現・理事長の小原芳明が明確化した方針です。子供達は、日常の風景の中から探究の種を見つけ、真剣に追及します。すると、山川草木のすべての中に、自然の「生きる力」が宿っているさまを発見できる。それこそが子供達自身の「生きる力」ともなっていくわけです。
玉川大学出版会が販売する『学びの技』は、いまや全国のSSH(Super Science Highschool)・SGH(Super Global Highschool)でも活用される探究の教科書です。ただし、玉川学園の探究は、あくまでも知育と徳育の両面展開が前提だということを忘れてはなりません。その上で探究の技法を具体的に提供することが、<全人教育>につながる道です。野瀬先生のご講話をうかがってから授業を見学することで、その重要性がまざまざと理解できました。授業で子供達が活き活きと学ぶ姿には、学ぶこと、知ること、発見することの喜びがありました。そして、至る所に置かれていた子供達の制作物から察せられるのは、子供達豊かな感性と、そこから出てきたであろう子供ながらの鋭い視点の数々でした。Primary Divisionの視察によって、我々はまさに<全人教育>を肌感覚で理解することが出来ました。
視察後、学校施設の一角をお借りし、「小学生に出来る『キャリア教育』は何?キャンパス内だけでなく外部ともつながって教育的価値のある連携事業を考えよう」というディスカッションテーマで、各自のアイデアを語り合いました。キャリア教育とは、子供たち自身が主体的に人生の方向性を見出すこと。そのために、我々大人はどのような環境を用意すべきなのか、そして教師はどのようにあるべきなのか。デンマークのVIA大学からの交換留学生が伝えてくれた話は新鮮でした。海外では社会人と教師との垣根がほとんどなく、そのおかげで子供達へのキャリア教育の話題には事欠かないこと。我々が当たり前と思っている教育の在り方から、あらためて問い直すきっかけをいただきました。
最後に、「出張xTalks」の実施にご協力いただきましたPrimary Divisionの教職員の皆様、とりわけ教育部長の野瀬佳浩先生、実施にあたりご協力いただいた河野峻平先生、松田裕介先生に、厚く御礼申し上げます。
<参考>
「全人教育100年」(玉川学園ホームページ)
https://www.tamagawa.jp/introduction/history/detail_19176.html
玉川学園小学部(Primary Division)
https://www.tamagawa.jp/academy/elementary_d/
玉川大学出版部『改訂版 学びの技』
https://www.tamagawa-up.jp/book/b635291.html
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xTalks Vol.30
テーマ:小学部(Primary Div.)を見学して、教育の本質を見直そう-<全人教育>を進化させる大学とK-12とのCo-Creation-
※見学会と座談を対面形式(学校訪問)で実施、見学者の定員あり(上限30名)
小原國芳先生の創出した<全人教育>は、もはや玉川学園の専売特許ではありません。いまでは全国の学校で、ごく当たり前の概念として使われています。
近年の教育改革の中軸である探究学習やSTEAM教育もまた、玉川学園が先駆的に教育実践を重ねてきた歴史があります。その成果として、中高の教諭が執筆した『学びの技』(玉川大学出版会)は、全国の様々な先進校(SSH, SGH)で探究学習の教科書として使われています。
生成AIの登場もあり、教育スタイルの刷新が不可欠な現代だからこそ、この素晴らしい教育資源を土台に、あらたな教育実践を切り拓きませんか?
いまだからこそ<全人教育>を見直して、玉川学園の最も大切な部分に触れましょう。そして、これからも教育界のリーダーであり続けるために、小学部の先生方と交わりながら、<全人教育>の進化について、アイデアを膨らませましょう。
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日時:2025年9月10日(水) 12:45~15:30
場所:玉川学園小学部(Primary Division)
12時45分 小学部(Primary Division)の入り口に集合
※セキュリティ保持のため、時間厳守でお願いします
13時 玉川学園の教育理念と小学部(Primary Division)について:
玉川学園プライマリーディビジョン(1-5年生)教育部長 野瀬佳浩 氏
13時35分~14時20分 授業見学(6時間目)
14時30分~15時30分 座談会