工学部の小酒井です。
みなさん、こんにちは。
STREAM Style xTalks Vol.28のレポートです。
もうそろそろ30回が見えてきましたね。
運営スタッフ一同がんばります。 これを読んでいる方もぜひ企画・運営にご協力ください💦
今回のテーマは、ある意味で謎のベールに隠された(?)玉川大学量子情報科学研究所からの話題提供です。
話題提供いただいた加藤研太郎先生とのミーティングから、「全人教育のなかの テクノロジー−量子情報科学・解体新書−」というタイトルを閃いてしまいました(笑)。まさしく、玉川学園・玉川大学のESTEAM教育と量子情報科学の2つに対する「解体新書」となるなと思ったからです。
そうしたら、下記の「企画趣旨」のとおり、加藤先生からは「腑分け」という言葉を使おうという話もでてきて、運営担当の私が一番楽しめたテーマ設定となりました。加藤先生とお話していると、一流の研究者は学ぶ姿勢が違うことがよくわかります。
また、メインのテーマともいえる「玉川の量子情報科学ってなに?」という疑問に答えるべく、量子通信と量子コンピューターの発生・発展の経路の違いをきちんと腑分けしていただいたこともよかったなと思いました。
今回はLightning Talk(LT)からスタートしました。教育学部の濵田先生からは、①NVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏が「量子コンピューターが変曲点に達している」と発言したこと、②OECDが提唱する「教師エージェンシー」についての情報が共有されました。
「教師エージェンシー」という言葉は耳にしたことはありましたが、つい「生徒エージェンシー」ばかりに意識が向きがちだったため、改めて考える良い機会になりました。
LTのあとは、本題である加藤先生からの話題提供です。二部構成で、第一部ではESTEAM教育、特に「テクノロジー」を中心とした先生ご自身の考えをお話しいただき、第二部では「量子情報科学とは何か」、そして玉川大学でどのような研究が行われているかをご紹介いただきました。
さらに、加藤先生は全人教育論に関する文献を読み解きながら、「夢」と「現(うつつ)」の両方を見据えることの大切さを強調されていました。理想だけでなく、現実も理解し、両者のバランスをとる姿勢には、私も大いに共感しました。会場にいた皆さんも、全人教育への理解が一段と深まったのではないでしょうか。
その後、ESTEAM教育のE・S・T・E・A・Mの、「分解」と「統合」という観点からの分析が示されました。この解説がまた非常に刺激的で、私自身も理解していたつもりのことが、新たな視点で整理され、とてもおもしろく感じました。
第二部では、「量子情報科学」について学ぶ貴重な機会となりました。加藤先生はまず、「情報」には2つの意味があることを指摘されました。ひとつは“information”(事実やデータなど客観的な内容)、もうひとつは“intelligence”(意味や解釈を含んだ情報)です。研究所では、主に“information”の側面を扱っているそうです。
また、通信に関する歴史的な事例も紹介されました。たとえば江戸時代、大岡越前が「堂島の米市場」で先物取引(将来の価格で売買するしくみ)を許可したこと、それに関連して旗振り通信を用いて情報が伝達されていたことなど、情報の活用とその発展が丁寧に解説されました。ここでも“暗号通信”が行われていたようです。確かに傍受されたらマズいですもんね。
さらに、明治時代の通信技術の歴史にも触れられました。明治時代には、海外とつながる海底ケーブルが整備され、日本も領土の拡大に合わせて独自の通信網を構築。その過程で、小原國芳先生が12歳で通信の世界に入ったというエピソードも紹介されました。
量子情報科学研究所では、「量子通信」を中心とした最先端の研究が進められています。光の性質などを利用し、より安全かつ正確な情報伝達を目指す技術であり、暗号や乱数の生成についても研究が進められています。理論と実験の両方を重視する姿勢が印象的でした。量子情報科学は難しそうに感じるかもしれませんが、実は私たちの暮らしにも深く関わる、非常に重要なテーマです。
その後のテーブル座談会も充実していました。テーマは以下の2点です:
「量子情報科学の力で何が解決されると嬉しいか」
→ 触覚や味覚などの感覚を細かく分けて守り、子どもや母親の感覚的課題を解決するというアイデアが出されました。これに加藤先生が関心を持たれていました。また、量子力学を人間科学の視点から教育に活かすことや、生物と物理が融合する未来の可能性についても議論が広がっていたようです。
「玉川学園で量子情報科学研究所や教授たちに何をしてほしいか」
→ 学生の量子情報科学への理解がまだ十分ではないという声が多くあり、図書館でのイベント開催や全学US科目(教養科目)への設定参加促進などの提案がありました。また、漁師情報科学研究所との距離を縮めるために、「はたらく細胞」のような漫画やアニメなどのメディアを活用して親しみやすくするというアイデアも出されました。学生の率直な要望として、「もっと身近に感じたい」という気持ちが込められていたと思います。
今回のxTalksを通じて、参加者同士が意見を交換し、多様な視点から教育や研究の未来について考えることができました。本当に学びの多い時間でした。
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xTalks Vol.28
テーマ:全人教育のなかの テクノロジー−量子情報科学・解体新書−
企画趣旨:今回のxTalksでは、玉川独自のESTEAM教育をE・S・T・E・A・Mそれぞれの言葉の意味を考えながら、量子情報科学研究所の研究者が"腑分け"をします。
今回の腑分けでは「テクノロジー」という言葉が肝となります。文系・理系を問わず、あらゆる分野の学生・教職員に向けて、ESTEAM教育推進におけるテクノロジーの捉え方、テクノロジーを社会貢献にどう活かすかを考えます。
テクノロジーの代表例としては「通信」を取り上げます。通信は、古今東西、人間の経済活動と深く結びつき、社会の発展を支えてきました。現代では、スマートフォンを通じて誰もが通信を行い、IoT (Internet of Things) によって世界中の電子機器が接続される時代です。玉川学園・玉川大学の歴史においても、「通信」は非常に深い縁があることをご存じでしょうか?
講演の前半では、ESTEAM教育における「T(Technology/テクノロジー)」が他の要素とどう関連するのかを解説します。全人教育との関係も考える時間となります。後半では、最先端のテクノロジー研究を推進する量子情報科学研究所の研究内容について、ひとりの研究者の視点からご紹介します。
専門分野を問わず、多くの皆さんに「量子の世界」の楽しさを理解していただける時間になれば幸いです。
話題提供:
加藤研太郎 先生(玉川大学 量子情報科学研究所 教授)
https://www.tamagawa.jp/research/quantum/
①E・S・T・E・A・Mの分解と統合:反対の合一
②量子情報科学研究所の成果と将来
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日時:2025年6月13日(金) 17:00〜19:00
場所:STREAM Hall 2019 1F アカデミックスクエア
申込締切:2025年6月12日(木)まで
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